6th Sign
What do you come to know?(きみは何をしるのでしょうか)






ジェームズとシリウスとリーマスの手際は相当なもので、1週間かそこらで必要な材料はすべて手に入った。もちろん、すべて無断でお借りしたものだ。たまにがそれについてくることもあって、彼女は無断でお借りすることには多少の抵抗があるようだったが、最近ではもう慣れてきてしまって、みんなすごいね、と無邪気に喜ぶようになっていた。(これって、良い傾向なのかな…?まあ、いいか)


そろった材料と大鍋と、例の『ゴーストを対象とする変身術およびゴーストを使った戦闘対策』の調合ページを開いて、ジェームズとシリウスとリーマス、それからは空き教室に座っていた。ジェームズが楽しくてたまらないといった声で、いよいよだなー!と言う。


「うん、いよいよだね」
「しっかし面倒な材料だったよな」
「さすがー!さすが僕たちー!」
「はいはい」


ジェームズは例のふざけた本をふざけた調子で読んで、リーマスとジェームズはその情報通りに薬を調合していった。薬はどんどん新しい材料を加えられて煮詰められて、何色かといえば緑色に近いかもしれないけど厳密にはよくわからない、そんな感じのひどい色になった。(なんか、ヘドロっぽい。)ジェームズが鍋を覗き込んでげんなりした表情になった。


「う、うわああああああ…」
「長いっつの」
「でもすごい色だね…」


心配してを振り向くと、彼女は少し眉をひそめて鍋の中を覗き込んでいたが、肩をすくめてにっこりと微笑んだ。(このくらいへいきだよ、わたし、ときっとそう言ったのだ。)ジェームズは、がんばれ!と空中に向って叫んでから、気を取り直して本を読み上げる。


「最後!心配なゴーストのためのとっておきの仕上げは…アングレカム」
「この花だよね」
「そのまま入れんのか?」
「そうみたい。花言葉は、祈り・いつまでもあなたと一緒に、だってさ」
「…ふうん」


(いつまでもあなたと一緒に、か。)リーマスは白く厚い花弁のその花を持ち上げて、鍋の中にそっと入れた。すると鍋の中の薬の色がみるみるうちに溶けるように変わっていって、透明に近いくらい薄い薄い水色に、変わった。さっきまで煮えたぎっていたのに、温度もいきなりすうっと下がったようだ。リーマスはそれをグラスに注ぐ。グラスに満たされた透明な青の向こうに、が笑顔で待っていて、それがゆらゆらとゆらいだ。(こうして、消えていくのだろうか。)(まさか、ね。)





リーマスに促されてはうすく口を開く。リーマスは彼女の唇にグラスを当てるくらいのぎりぎりの位置に固定して、それからグラスを傾けた。透明な液体が彼女の口の中に入るたびに、アングレカムの甘い香りが漂った。(甘い香り。いつまでもあなたと、一緒に。)


「おおお、空中で薬が消える」
「すげえな、飲めてんだな」


ジェームズとシリウスはリーマスが空中にグラスを傾ける様子をじっと見ていた。グラスはすぐに空になり、けれどにはあまり変化があるように見えない。リーマスはジェームズを振りむいた。


「変わりないかも…」
「おっかしいなー」
「失敗したのか?」
、具合はへいき?」


リーマスがたずねるとはうなずいた。それでも心配そうな顔のリーマスに、良い匂いだったよ、と笑って言う。その瞬間、ジェームズとシリウスが、は?とひどく間抜けな声を出した。リーマスは驚いて2人を振り返る。


「どうしたの?」
「り、リーマス、今のっ」
「今の声、か?」
「え?」


リーマスがを見ると、彼女は目を丸くして言った。


「聞こえたの?わたしの、声」
「うわああああああ」
「長いっつの!」
「わあ…聞こえてる!わたしの声、聞こえてるんだ!」


はうれしそうに笑った。リーマスも彼女に微笑みかけて、声だけだったね、失敗しちゃった、とふざけた調子で言う。は首を振って、大成功だと思います、と、とてもとても幸せそうに微笑んだ。けれど、とリーマスは思う。いつも彼女はあまり多くを望まなくて、それが少し不安になるんだ。(儚い予感。僕が願うのは、アングレカムの花言葉なのに。)

きみに幸せを渡したいんだ もっともっと ずっとずっと






   

(070729)