くるくるくるくるくるくる(エンドレス)羽ペンを回していて、ついに手がつって「いでー!」と叫んだところで、リーマスがいつものあの笑顔でやんわりと「ほら、言わんこっちゃない」と笑った。言わんこっちゃない、って。お前、いつ、どこで、発言してたんだよ。 「リーマス私 今日 誕生日」 「へえ」 「リーマス…」 「へえ」 「…今日 カズシゲの誕生日」 「ええっ!」 「そこかよ!そこで反応しちゃうのかよ!カズシゲって誰かわかんのかよ!」 「ごめん、。ちょっと からかってみただけだから」 「やめてよそういうの!私のハートはガラスでできて 「あ、ちょうちょだ」 聞けよ!!」 リーマスは淡い色をした羽の蝶々にむかって指を伸ばしながら、「おいでおいで」と言った。とてもとても優しい声だった。どうせなら私だってそんな声で呼ばれたいし、そんな目で見られたい。もうこのさい、リーマスにならばパンツ見られたって許せると思った。思ったところでリーマスは絶対のぞかないだろうとも思う。 「、レポートはいいの?できた?」 「よくないです。できてません」 「じゃあ早くやりなさいね」 「はい、お母さん」 「………」 「………」 「………」 「…お母さんのなにが不満でしたか」 「…性別が違うところが…」 「いいじゃんか、そんなの。些細な点じゃんか」 「じゃあこの間が割ったビーカーもほんの些細な点としてマクゴナガル先生に「本当にすみませんでした」わかってくれればいいんだよ」 ぐりぐりとレポートを書きなぐりながら、リーマスのほうを見やると、まださっきの蝶々を見ていた。好きなんだろうか(蝶々が)。欲しいのだろうか(もちろん蝶々が)。そんなに好きならば、言ってくれれば私がとってきてあげるのに。レポートは書けなくても蝶々ならばとってこられるよ。 開け放たれた窓の縁に蝶々がとまった。それから軽くジャンプするように植木の花に近づいて、また、とまった。リーマスは小さく口を動かしている。おいでおいで。 私なら行くよ。呼べばすぐに駆けつけてあげるよ。 「私 今日 誕生日なんだよ!」 なんだか苛々してきたので叫んでみた。蝶々はひらひらと窓の外に帰っていった。リーマスはびっくりした顔でこっちを見ている。蝶々じゃなくて私を見ている。(そりゃそうだ) 「今日 生まれました…!」 「うん」 リーマスは少し微笑んで 「この子しょうがないなあ」 という顔をした。 「うん、知ってるよ」 「え、なんだ、え、知ってるのかよ」 「知ってるよ。何年一緒にいると思ってるの」 「半年です」 「2分の1年」 「だから、半年じゃないですか」 「そうだよ」 「……祝えよ」 「祝いたいよ」 「でも僕も昨日聞いたんだよ」 「へえ」 「が言ってくれないから。誕生日アピールでもしてくれればよかったのにさ」 「(誕生日アピールってなんだ)」 「だからちょうちょ、を」 「生け捕りに?」 「ハッ。……指にとめてに見せてあげようかなあ、なんて」 「(えっ?今っ、『ハッ』って?え?)(ば、バカにされてる…!!)」 「思ったんだけどさあ…」 「(可愛い顔してこの子わりとやるもんだねと…!?)」 「…聞いてる?」 「え、聞いてるヨ!」 「(聞いてないな)」 「(蝶々で私が喜ぶと思ったんだ…)(バカだ…!)」 リーマスは少し考えるような素振りを見せて、ゴソゴソとローブのポケットをまさぐった。飴玉がふたつばかり出てきた。 ひとつを自分の中にしまいこみ、もう一つの赤い包み紙のほうを 「はい」 くれた。 「なに」 「たんじょうびおめでとう」 「(棒読み…)あ、ありがとう」 「うん」 「う、ん?」 「…大きくおなり」 「大きくなります」 「立派な大人になりなさい」 「頑張ってみます」 「もう少し勉強がんばりなさい」 「…え」 「それからテーブルマナーを身に付けなさい」 「…ええ。……。ええええ」 リーマスはにっこり笑うと、椅子から立ち上がって私の頭に手をのばした。 一瞬、突然放たれる光に目がくらみ、プライバシー保護のときの声で『目覚めよ…』とか言われるのかと思ったけれど、そうじゃなかった。普通に頭をなでられた。 (リーマス、私もう子供じゃないんだよ。)そう思ったけれど、いやじゃなかった。少し嬉しかったかもしれない。いや、嬉しかった。そして恥ずかしくもあった。 リーマスはそっと手を離して、またにっこり微笑んだ。 「紅茶を淹れてあげようか、のために」 「…、うん」 言葉につまった。嬉しすぎて。 「どれがいいかな」 どれでもいいです。 リーマスはたくさん茶葉を持っているんだろうか。棚の前で唸ってから、こちらを向いてあの微笑みのまま手招きした。おいでおいで。「おいで、」 いま行くよ。すぐに駆けつけてあげるからね。 お い で お い で |