ROMANTIST★★Oh, but there's no romance without changes
「取り残されたみたいなのよ」
風が冷たくて透明で心地良いベランダであたしは前髪を弄びながらそう言った。リーマスは振り向いた。
「何の話?」
振り向いた顔にはいつもと変わらない笑顔。それはとてもあたしを、安心させるのだ。
いつまでも見ていたいと思える。でも結構あたしにはそんなものがある。
珍しいらしい、他の人に言わせれば(てゆーかシリウスに)(飽きるだろって言われた)(女の話じゃねえよ!)
ああ、そうだなぁ、言うなればあたしは何かが変わるということに対して臆病なんだろうか。
「まあ、色々な話」
「それじゃ分からないよ」
「だよね」
「聞いて欲しくて言ったんじゃないの?」
「うんまあ、そうだ」
「だったら言えば」
「あははその通りだ」
「何がおかしいのか分からないよ」
「手厳しいなー」
「あはは」
でも変わらないものは、そう多くは無い。退屈な日常なんて贅沢な勘違いだ。
どいつもこいつも自分たちの幸せさを分かってないんだ。変わらない幸せさを。
「お前もかリールー!」
「何が!つかリールーって何!」
「リーマスルーピンの、略?」
「略さないでよ・・(しかも何で疑問系なんだよ)」
「長くない?」
「いやそれはがフルネームで言うから」
「ああ、そうだ・・そうだよ・・」
「(馬鹿だ)」
「馬鹿とか言うな!」
「言ってないよまだ」
「予防策です」
そう言ってから、あたしはふと気付いた。さっきリーマスが「まだ」って言ったってことは、
言うつもりだったというわけだ。それって予防策は成功しているのだろうか。微妙な気がする。
微妙な顔でリーマスを見ていると、の変な顔はいつものことだけどさ、と彼は呟いた。
「いつものことかよ!」
「うん」
「な・・!(んなキッパリ!)」
「それで、いつものことだけどさ、」
「ぐっは!また言った!」
「ねえ」
「・・(あーあーあー畜生めー)」
「聞いてる?」
「ははーん、トドメさす気?」
「いや・・(ははーんって古い・・)」
「あ、やばい!ははーんとか古いよね!?」
「どうでも良いから」
「・・」
「あ・・(怒った?)」
「・・でも、」
「な、何?」
「ナウいよりマシだよね」
「・・うんまあ」
リーマスは諦めたように笑った。それでも彼の笑顔はあたしを安心させる温かさに溢れているのだ。
昔からそうで、たぶんこれからもそうで、永遠にそうだと、今は思っている。
「変わってしまうのかな」
「ん?」
「そういう話だった」
「は?何が?」
「・・・」
「だってが切れ切れに喋るから訳分かんない」
「そ、そりゃそうだけど・・」
「ああ、えっと、取り残されてだったかな?」
「それはあれ、ジェームズとリリーの話」
ああ、とリーマスは納得したように頷いた。ここ最近のあたしたちの周りでの一番の変化はそれだからだ。
「でも」
リーマスが言いたいことは分かる。確かにそれは大きな変化だが、おかしな変化ではないわけだ。
「前からそんな感じではあったでしょ」
「うーん・・」
「はもしかしてすごく鈍いわけ?」
「いやそんなことは」
「あるよ」
「い、いや」
「あるって」
笑いながらリーマスは言った。それでも相変わらずのあたしが大好きなあの笑顔だ。
それにしてもやたらに笑う。いわゆるあれか、馬鹿にされてるのかこれは。この野郎。
「んな笑わなくても!」
「だってさぁ・・」
「何だもう・・」
「ああごめんごめん、で?」
「で?って」
「どうしてそんなに落ち込んでるの?」
「落ち込んではないよ」
「そうかな」
「うん」
リーマスは少しだけ視線を落とした。あたしもそれを追う。灰色の石造りの床が、冷たい。
でもこの床は何年も前から変わらずに此処にあって、みんなを見てきたのかもしれない。
「変わらないって、良いことだと思うの」
だって何もかもが変わりすぎる。この床だっていつかは、張り替えられたりするのだろうか?
「あたしだけかな」
今からそんな年寄り臭いことを思うなんて。まだ先は長くて、きっと変わってばかりなのに。
でもそんな変化すら、あたしは嫌なんだ。出来ればこのまま、何も変わらないで居てくれたら。
この床とか、ジェームズとか、リリーとか、シリウスとか、ピーターとか、リーマスとか。
変わらないで居てくれたら良いんだ。出来ることなら、氷漬けに、してしまいたい。
「そんなことないよ」
リーマスは呆れたように笑って言った。さっきとあまり変わらないのだが、それでも少しは違う。
「僕だってたまにそう思う」
風がますます冷たくなった。もうあたしにはあまりにも寒すぎて、心地良くは無い。
こんな風にあたしたちのまわりはどんどん変わって行って、あたしも変わってしまうんだろう。
「でも、どうしようもないよね」
リーマスの言った言葉はあたしにトドメをさした。まあ、そんなこと分かってはいたのだが。
それでも他人に言われると、それは普遍性を持って、より確かなものになってしまう。
「分かってる」
だけどあたしには笑うしかなかった。どうしようもなかったのだ。変わってしまうのは、止められないのだ。
どんなにあたしが変わらないことを望んでも、周りはどんどん変わっていくし、あたしも変わる。
そのうちあたしも変化を求めるようになるかもしれない。そんなこと分からないし、どうしようもない。
自分のことなのにどうしようもないなんて、おかしな話だ。でも実際、去年のあたしの考えていたことと
今年あたしが考えていることは違ってしまっている。あたしは変わったつもりなんて無いのに。
「分かってるよ」
変わっていくことを受け入れるしか出来ない。ひどく、歯痒い感覚だ。
風はどんどん冷たくなって、空はどんどん暗くなって、きっともうすぐ夕食だ。
「夕食、何かなぁリーマス」
「何だろうね」
「戻ろうか」
「寒いしね。でもその前に」
リーマスは室内へと続く扉に手をかけてあたしに背を向けたまま言った。
ほんの思いつきを言う口調で。実際、そうなんだろう。
「の変な顔はいつものことだけど」
「・・はいはい」
「良いよね」
「は?」
「ね」
振り向いた顔にはいつもと変わらない笑顔。それはとてもあたしを、安心させるのだ。
031209(結局何かってとノリです。最初考えてたのと全く話が違いますもの)