solty pizza---I love this town! and,you.
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昼過ぎのことだった。あたしはピザを食べていた。ピザハウスの宅配のお兄さんが、ちょっと格好よかった。
でもあたしはああいうヒョロっとした感じより、もうちょっとワイルドな方が好みなのである。
黒髪でバイク乗ってて高級でキツイ煙草吸ってたりしたら良いね、たまんないよ。
ていうかこれは別にシリウスブラックを名指してるわけではないんで誤解しないよう切にお願いする。
そういえばこの間彼がキレイな女とバイクでぶっとばしてるのを見た。あ、1週間前は別の女だった。
わあ、ワイルド。
街中を結構なスピードで走り抜けて行った。後ろの女が、きゃーこわーいとか言ってた気がする。なら乗るなよ。
あたしはそう思いつつちょっと目が合ったのでシリウスに手を振った。軽く振り返された。
別に大して仲良くもなかったが、このへんに住んでるノン-マグルはあたしたちだけなので、微妙な仲間意識は存在するのである。
因みにノン-マグルはあたしの造語。思い出すと少し笑えた。笑いついでに、買い物にでも行こうと思う。




「ああ、そうだった」
思わず声を出してしまい、あたしは独りで少し笑った。学校卒業直後の若い独り暮らしは、孤独の宝庫だ。
今日がハロウィンだと言う事にもさっぱり気付いていなかった。もう家族も居ないから、仕方のないことだった。
町中に毒々しい色のオブジェや旗が飾ってあった。食欲が失せそうな気がするが、レストランは満員だ。
所々に可愛らしい格好の子供達が歩いていて、あたしは少し泣きそうになった。年を取ると涙もろくなるものだ。
ぐすりと鼻を鳴らし、そのまま行き着け、というのも馬鹿馬鹿しい安っぽい食料品店へと歩いていこうとした、その時。
ばかん、とおかしな音がした。聞いたこともない音だった。一体、何をどうしたらそんな音が出るんだ。
思わずそう聞いてしまいたくなるような。不快さに顔をしかめ、あたしは頭をめぐらせた。
後方にある道路が、へこんでいる。どこからか鉄の匂いがした。



「はは、はははは、そういうことか、そういうつもりなのか、なあ、Peter?」
彼はそう呟きながら笑っていた。あたしは少し離れた位置から目を見開いてそれを見た。ひどく寒気がした。
彼は、いったいどうしたのだろうかと思ったが、あたしが、どうすれば。声をかけることが出来なかった。
取締りがやってきて、彼を取り押さえる。周りの人に魔法の処置を施す。あたしの方にも1人、歩いてきた。
「ノン-マグルです」
あたしはそう告げた。この町に住むノン-マグルは、あたしと、彼だけなんだよ。そう言いたかった。
やってきた奴は頷いて、変なことを言っていた。ポッター?ヴォルデモート?ああ、久しぶりに聞く名前だ。
彼が捕えられていく。焦燥し、顔をうなだれて。あたしには分かるよ。きっと、ポッターのこと、考えてるんだ。
だってあたしと彼は、この町で唯一のノン-マグルなんだよ。あたしには、分かるんだよ。
「シリウース!」
あたしは叫んだ。取り締まり員が変な顔をしている。彼は顔を上げない。さっさと上げてくれ、頼むよ。
もう一度叫ぼうとしたが、取り締まり員が慌てて口を塞いだ。ああもう、邪魔するな。怒ってその手を振り払う。
「シリウス!」
あたしの声は、届いているのか?彼は顔をあげ、妙な顔でこっちを見た。しかし、何も見ては居なかった。
あたしの声は、届くのか?あたしは彼と仲良くもなんともなかったし、あたしの名前も、知らないのかも。
でもあたしには言いたいことがあった。しかもそれは、絶対にあたしにしか言えないという確信を持てる言葉だ。
なぜならあたしと彼は、この町で唯一のノン-マグルだから。誰も知らないんだよ。
ついこの間まで彼がどんなに澄んだ目をしていたか、あたししか、見てないんじゃないか。
「シリウス・ブラック!あたしはあなたのこと、信じてるよ!あなたがそんなことをしたはずないって、あたし、多分そう判ってるよ。証明できないけど、でも、あたしあなたと同じ街に居る唯一のノン-マグルだから。だから、信じてるよ。いつか絶対、みんなにも、それが解る。シリウス・ブラック、帰って来るよね、いつか」
シリウスは顔を上げてあたしを見て、少し笑った。あたしも笑い返した。取り締まり員が、あたしを取り押さえる。
「放せよ!そいつは、何もしてないだろ?何もして無い証拠があるだろ?何してんだよ、放せって、そいつに触るなよ!」
シリウスが叫んで、取り締まり員の腕が緩んだ。あたしは、ありがとう、と言った。彼は微笑む。
微笑んで(あたしは彼のそんな穏やかな顔を初めて見たよ)、そのまま、おかしそうに笑い出した。
あー、何なんだよお前、もう。彼はそう言って笑っていた。煙草を吸ってバイクを乗り回しているワイルドな彼が。
回りの人々が呆然とした顔をしている。それは何故かあたしの気分を良くさせた。みんな、馬鹿だよ。
でも、仕方がないのかもしれない。みんなシリウスがどんなに澄んでいたか、知らないんだから。可哀相に。
シリウスが自分を押さえつけている男を振り払ってあたしのところに歩いてきた。頭を撫でて、呟いた。
「ありがとう、
ああ、あたしの名前、知ってたんだね。



家に帰ると、もう冷えたピザと炭酸の抜けたコークがあたしを出迎えた。蓋を閉めるのを、忘れていたから。
あたしは塩辛いピザを口に含んで、さっきのシリウスのことを考えた。なんてこと。あたしって、何者?
もしかして、彼の事が好きだったりするのかも。それとも、やっぱり唯一のノン-マグル仲間だからかな?
どちらにしろ、あたしは彼を待っているだろう。この町で。きっと、帰ってくる。










040605(シリウスがそんな寂しく住んでるはずがないんですけどもっとババーンと豪邸建ててるね絶対!でもそうするとこの話成り立たないんであいたたたー)