ナツアオソライロ=natuaosorairo=
抜けるほど青いというのは成る程こういうのを言うんだなぁとあたしはひとり納得していた。
階段に寄りかかって首を痛いくらい上に向けて空を眺める。
暑いのは苦手だけれど夏は空が晴れていて良いと思う。
たまに突然どしゃぶりが降るのもまた良いと思う。
あの青い中に物凄い存在感を放っている入道雲も良いと思う。
しかしながら暑い。でもこのギラギラした感じも良いと思う。
空を見上げているだけなのに額が汗ばんできたのも別に構わない。
今寄りかかっているのと反対側の壁に行けば日の光は届かないのにねぇ、
そう現実的な声が頭の何処からかするのを無視してあたしはそこに立っていた。
反対側からでは空がよく見えないのだよ。理性的なわたしよ。
「あっつー・・・」
「なあ、お前は馬鹿なのか?」
余りの暑さに一瞬だけ下を向くと、上からそう言葉が降ってきた。
驚いて見上げると、こちらを見下ろしている人型の影があった。
「・・・影だ」
「大丈夫かお前。やっぱ暑さでイカれたんじゃねえのか」
「違うし!ここからだと真っ黒に見えるの」
「へえ・・・じゃあ俺が誰だか分かんねえのか?」
「いやそんなムカつくこと言う人はそうそういないし」
「分かんのか?」
「え、シリウス・・・じゃないの?」
何やら真面目に返されたのであたしは少しだけ不安になった。
明らかにシリウスだろと理性的なわたしは思う。
見えないという不確かさに理性的なわたしが悩む。
「ち、違ったら・・・すみませ」
「ぶっは、何言ってんだよコイツ」
「・・・(最悪だ)」
「あ?そんな不細工な顔するなよ。救えねぇ」
「・・・(死んでくれ)」
「なぁお前今死ねとか思っただろ」
「いえ別に」
シリウスはくつくつと笑った。
顔は見えなかったけれどシリウスが笑ったのは分かった。
シリウスは階段から身を乗り出してあたしを見ていた。
高さはおよそ0.5メートル。(目測)
結構近いけれど、かえってそのせいでシリウスの顔に濃い影が差していた。
「なあお前は馬鹿なのか?」
「は!何をさっきから失礼な!」
「だってさぁ、熱射病とかなるだろ?」
あたしはそこで自分がこんな所に立っていた目的を思い出した。
シリウスがいるせいで顔に影が当たって涼しくて、ああ空は見えない。
「どいてよシリウス」
「な、何かムカつくなそれ・・・」
「邪魔だね!」
「!!」
シリウスがかなりのショックを受けたのが顔は見えなかったけれど分かった。
実は結構ナイーブなんだと誰かが言っていた気がする(多分きっと眼鏡主席だった)
「いやあのね」
「・・・・・」
「空が、見えないっしょ」
「空?」
シリウスは怪訝そうに言って上を見た。空があるはずだった。
「空見てたのか?」
「まあね・・・シリウスには分からな」
「悪ぃな」
分からないかもね、と言おうとした所でシリウスが突然謝って身を引いた。
顔が見えた。やっぱりシリウスだった。
顔に当たっていた影がなくなって、それはひどく、暑かった。
「・・・悪くはないの」
「邪魔したみたいだからな」
「・・・良いんだよ。面白かったよ」
「はは、そうか?」
シリウスはもう一度階段のてすりから身を乗り出した。涼しい。
「んでお前まだ空見んのか?」
「どうしようかな・・・」
「暑いだろ?上がろうぜ」
「そうしようかな・・・」
「とっとと上がれ。死ぬぞ」
「う、はいすみません」
あたしは壁を廻りこんで階段を登った。かつ、と乾いた音がした。夏だと思った。
19段上にシリウスが待っていてにやっと笑った。
「死なないで良かったな」
シリウスはあたしと太陽の間に立っていてくれて、あたしはありがとうと言った。
意味分かんねぇよオレそんなのとシリウスはぽつりと言って笑った。
030720(ジェントルマンですから・・・英国紳士ですから・・・)
031115(書き直したよだって今までの意味分からんもの。あー書き直しても分かりませーん★)