或る魔法史の時間に
ONE DAY, ONE DAILY DAY
















たまに、色々なことがどうでも良くなってしまう。身体が妙にだるくて、
頭が持ち上がらなくて、周り中に1枚フィルターが掛かっているようで、
太陽の光が冷たくて、空気が錆の匂いを漂わせていて、そんな時もある。





「ね、眠い・・」
「じゃあ寝れば」



羽ペンをくるくると回しながら。思わず呟いた言葉にリーマスはあっさりと答えた。
あたしは一瞬思わず少し感心してから、彼に見えるように顔をしかめる。


「他人事だと思ってさ」
「他人事だから」
「薄情者め・・!」
「はいはい」


こちらを見もせずにリーマスは頷いた。カリカリと耳障りな音が続く。
耳障りな教師の声をそのまま反映した羊皮紙は、彼の成績の源だと思われる。
ジェームズとかに比べて目立たない気がするけれど、頭が良かった。




それに比べてあたしはどうだ。




別に特に何かが出来るわけじゃなくて、派手な悪戯だって出来ない。
それを考慮に入れるとあたしはピーター以下なんじゃないだろうか。


「ピーター以下・・・」
「ピーター、イカ?」
「するめとかね」
「寝れば?」
「頑張ります」
「ふうん」



カリカリカリカリカリ。これを耳障りだと考えるのは、余りにも、傲慢だ。

であるからして、叛乱は。これを耳障りだと考えるのも、余りにも、傲慢だ。

ピーターは眠っている。彼以下だとかいう基準の付け方も、余りにも、傲慢だ。




とりあえず隣を見た。リーマスが居た。
自分のほとんど何も書いていない羊皮紙と彼の羊皮紙を見比べて、頭が痛くなった。
だらだらと時間が流れていくのが分かった。空気が生ぬるいからだ。
身体が妙に重くて、眼がぼんやりと霞んでしまう。寝不足なわけでもない。


ただ自分がだらけているだけだと分かっていた。そういうこともある。
でも、りーマスに比べてあたしはどうだ。同じ人間なのに。
羊皮紙をもう一度見比べて、頭が痛くなった。



書いていないのは自分なのだから、どうしようもないと考える。
どうしようもないと考えて、そして、



ああ、リーマスはまた何かを書きとめた。




あたしは何をするのか。何をしたいのか。何をすべきなのか。
だるい頭を持ち上げて外を見ると、のんびりと雲が浮かんでいた。
何だかとても、頭にきた。やたらと怠惰な物体に思えた。



「眠い」
「寝れば良いのに」
「うん」
「寝るの?」


リーマスが初めてちらりとこちらを見た。意外そうな顔をしていた。
あたしは微笑んでゆっくりと首を振った。羽ペンをくるくると回す。



「やめとく」
「そっか」



にこりと彼が微笑んだのを見て、あたしは少し嬉しくなった。
何がどうしてなのだか分からないが、とても、嬉しくなった。



息を吐いて、それに憂鬱な怠け者のあたしをのせて。
このまま飛ばせてしまえば良いけれど、やはりそれは無理だろうと思う。
隣からはカリカリと言う音。しかしたまには、寝息が聞こえる事もある。




「もう少しだけ、頑張ってみようかと思うのだよ」


あたしはそう呟いて羽ペンを持ち直した。もう遅すぎるようにも思えた。
リーマスが喉を鳴らした。視線を上げてリーマスの顔を見る。
彼は前に置いてある羊皮紙を持ち上げてあたしに1枚を渡した。
びっしりと彼の字で埋まっている。あたしは驚いてリーマスを見上げた。


の分もとっておいてみた。ノート」
「わお・・!」
「どうせ最後は頑張るんだろうと思って」
「うわぁ最高・・!」
「どういたしまして」
「ありがとう愛してるよりーマス!」
「・・・へえ」
「わー最高だよほんと・・!」
「・・・」




眠たいまま、あたしは、それでももう少しだけ頑張ってみようと思う。
リーマスが寝ているときはあたしが彼の分のノートをとろうと、こっそり決意した。



















040112(やっぱ彼は優しいと良いなぁと思う)(勝手に)