彼を色に例えるとしたらそれはきっと漆黒ではない。





kurayamieregy--in everyday library with fears--
暗 闇 エ レ ジ ー








トム・リドルはあたしの2メートル先で本棚に寄りかかっていた。
手に持った本に視線を落としているせいで長いまつげの影が顔に落ちる。

男のくせにホグワーツ一綺麗だ、とあたしがひそかに思っている人だ。


あたしがひそかに思わなくても彼はとても綺麗で、たしか
ファンクラブがあった気がする。おいマジかよ少女漫画かよ。



彼はいつもホコリ一つ無い漆黒のローブを着て、
漆黒の髪をさらさらたなびかせて紅い目で微笑んでいた。



黒、紅、あんなに毒々しい色なのに優しい雰囲気があるのは人徳なのか。
それがあいまって彼を余計に綺麗に綺麗に見せているのだ。



でもあたしは何となく、何となく仲良くなれない気がする。

あたしは元から人とそんなに上手に付き合えるタイプではないけれど、
そんなんじゃなくて、あたしはあんなに良い人なリドルのことが、


ちょっと怖いと言ったら、一番近いのかもしれない。





、何してるの?」
「ん?ああ、目の保養・・・」
「わ、きゃーリドルじゃん!」
「うん。リドルだよね」
「見てたくせに何よその冷たい反応は」
「見てたけどさぁ・・・」
「ほらほら、チャンスだよファンクラブがいない!」
「いや、違うってそんなんじゃ」



友人は本棚から半身だけ覗かせてそこまであたしと喋ったが、
あたしの反応を見ると、つまんないのー、笑って引っ込んだ。


遅れて、引っ込んだ本棚の向こう側から声だけがやって来た。


「じゃ、あたしもう行くよ?」
「へ?あ、デートか」
「へへへ。も頑張れよ」
「・・・恋人さんに言いつけるよリドル見て騒いでたって」
「ぎゃーごめん冗談だよ!」



友人がけらけら笑う声が聞こえて、マダム・ピンスの不機嫌な
うなり声が聞こえて、それから静かになった。


さっきまで騒いでいた後の静けさに少し沈んで、あたしはそろそろ
目の保養はやめにして本を探そうと振り向いた。すると、




「やあ」
「・・・・・」





紅い目があたしを見下ろして微笑んでいた。驚きの余り声も出ない。



何も言わないあたしを不審に思ったのか、リドルは首を傾げた。


「どうしたの?」
「は!い、いえ別に・・・」
「そう。良かった」



リドルはそう言ってにこりと微笑んだ。
胸についている監督生バッジがやけに目にちらついた。


あたしは何となく、何となくだけれどこの人が怖かった。

みんな良い人だと言っているし、良い人だと思うのだけれど。



「あの・・・何か用ですか?」
「そっちこそ僕に何の用?」


リドルはそう言って悪戯っぽく微笑んだ。やっぱり面白い良い人だ。
見ていたのを気付かれていたのだと知ってあたしは赤くなった。




謝ろうとしてリドルの顔を、微笑んでいる目を見上げて違和感を感じた。




「・・・・・」
「どうしたの?」
「あの、今のってあたしに笑ったんですよね」


思わず尋ねると、リドルは怪訝そうに眉を寄せた。
おかしな事を言ってしまってますます顔が熱くなったが、違和感は消えなかった。



「そうだけど?」
「で、ですよね・・・見ててすみませんでした」
「ううん良いよ慣れてるから」
「(慣れてるからってオイ!)」
「それよりさ、」



何で君に言ったんじゃないって思ったの?とりドルは少しかがんであたしの顔を見た。
とても綺麗であたしはくらくらしたが、違和感は消えなかった。




「いえあの」
「どうして?」




こんなおかしな話をするのも悪いと思って言葉を濁そうとしたが、
リドルは、純粋に知りたそうな顔をしてまた尋ねた。違和感は何故か増した。




「えっと・・・変な話なんですが」
「あはは、良いよ僕が聞いたんだから」
「リドルさんに違和感を感じまして」
「違和感?僕は君のさんづけに違和感を感じるよ」
「え、や、すいません。リドルが、」
「うん」
「あたしのことを見てないというか、」
「・・・・・」
「騙されてるみたいな」
「・・・・・」




リドルは黙り込んでうつむいた。まつげの影が顔に落ちた。



怒らせてしまったのかという後悔に駆られていると、リドルが唐突に顔を上げて

目が合った。





その時のリドルは微笑んでもいなくて怒ってもいなくて呆れてもいなくて
いわば無表情、だったのだろうか。





でもあたしは物凄い恐怖感を覚えて息を呑んだ。
それなのに何故か違和感は無かった。







「そうかな?」
「・・・・あ・・・」


気がつくとリドルはまたいつもの顔に戻って微笑んでいた。
胸の監督生バッジとスリザリンのマークがやたらと目にちらついた。



白昼夢を見たような気分であたしは一瞬固まってから、
完璧な監督生であるリドルに変な事を言ってしまったことをひたすら謝った。




「す、すいません変な事言って・・・」
「ううん、良いんだよ」
「はあ・・・すみません本当に」
「君は面白い子だね」
「は?(馬鹿にされてるのか?)」
「名前は?」
「え、っと、です」
「ふうん・・・」




リドルは違和感無くうっすらと微笑んだ。蛇のような目だとふと思い、
失礼な事を思ってしまったとまた後悔した。




「そっか。またね
「あ、はい・・・」
「また会いに来るよ」





リドルはあたしを楽しそうに見て夢のような事を言って静かに図書室を出て行った。
通り過ぎる時にマダム・ピンスに会釈をした。マダムは機嫌よく頷き返した。





あたしは一人とり残されて、怖くて綺麗な無表情をぼんやり思い浮かべていた。














030712(私はリドルは超絶綺麗だと思い込んでます)(ラスボスだし)