---霞坂---kasumizaka---まだ覚えているんだ、何となくだけれどね、だって余りに霧が濃かった、そんなの如何でも善いんだけど
白い煙が当たり一面をくまなく覆いつくしていた。
黒髪の少女が一人、手を組んで立ちつくしていた。
「・・・ま、よった」
黒髪の少女は顔を歪めて呟いた。寒さで歯がかたかたと鳴っていた。
体を覆う薄手のコートは、霞の水滴でぐっしょりと濡れていた。
気弱な表情で足元を見つめた後、少女はゆっくりと歩き始めた。
かさかさと落ち葉が耳障りな音を立てた。
「ここは・・・どこだ・・・イギリスなのか・・・?」
足を止めて周りを覆いつくす霞とその向こうの雑木を見渡す。
真っ白だった。
◆
「はぁ、っ」
息を吐き出してまた辺りを見渡す。これでもう12回目、と呟く。
独りだと独り言が多くなるなぁと独り言を言う。
真っ白な世界に首を振って、少女は足をゆっくりと持ち上げた。
ちょうどその時。
「あれ?何してるのこんなとこで」
声がして、がさがさと木を掻き分ける音がして、一人の人間が現れた。
少女と同じくらいの年頃で、鳶色の髪が額に貼り付いていた。
「た、助かった・・・!」
少女はそうかすれた声で叫び、くらっと倒れた。
鳶色の髪の少年が慌てて駆け寄って受け止める。
「う、っわ大丈夫?」
「はあ・・・気が・・・」
「木?」
「気が抜けまして・・・」
「ああ、気・・・」
少年は少女が立てるように体をささえたまま尋ねた。
「どこから来たの?」
「えっと・・・山・・・」
「・・名前は?」
「です」
「そっか。僕はリーマス」
「宜しくです・・・助けてくれて有難う」
「どう致しまして。ねえ、ホグワーツって知ってる?」
「ほぐわーつ・・・?」
「ああ・・・」
リーマスと名乗った少年は納得したように数回軽く頷いた。
珍しいね、と呟く声がにも届いた。
「はは、迷子なんて珍しいですよね・・・」
「うーん、まあ、そんなとこ」
リーマスはにこりと微笑んだ。も薄く微笑み返した。
「疲れてるでしょ、僕が運んであげるよ」
「え、え!?いや、良いですよそんな!ちょっと歩きっぱなしで、死ぬかと思って」
「・・それはだいぶ辛いでしょ。それもこんな所で」
「そ、そんなに奥なんですかここ・・・!」
「まあ、ね」
リーマスは言葉を濁すと、コートのポケットから木の棒を取り出した。
が不思議そうにそれを見る。
「何ですかそれ?」
「・・・お休み」
リーマスはその棒切れで軽くに触れ、二言三言呟いた。
その途端、が意思を失って倒れた。リーマスがそれを支える。
また会えるといいね、と呟いた声は眠るには聞こえなかった。
◆
明るいホテルの一室でが目を覚ますと、近くにいた友人が
を急いで覗き込んだ。勢いで眼鏡が少しずり落ちた。
「あ、!やっと起きた!」
「んー・・・?」
「心配してたのよ、ホテルの前に倒れてたから」
「ホテル?」
「せっかくの修学旅行で1日行方不明なんてね」
「ああそうだ、あたし、山で迷ったんだよ!」
「みんなを探してて1日潰れたしね」
「え・・うわぁごめん・・!」
「あはは、良いよそんなの!無事で良かった!」
「ありがとう・・死ぬかと思った、ほんとに・・あれ?あたし、ホテルの前に居たの?」
「うん。よく場所分かったよね」
は訝しげな顔をして首を振る。ぜんぜん知らないよ、と言った。
目を閉じて何かを思い出そうとする。
「・・・駄目だー霧しか思い出せないー」
「誰か連れてきてくれたのかな?」
「でも英語喋れないし・・・」
「あ、そっか。んじゃあ、魔法使いとか!」
「あはは、そんなわけないでしょ」
030715(そんなわけあるんですさん・・・!)