INSIDEAPPEARS









「あぁ!エイリアン」
「えっ何」
「身体の内側を突き破って現れるものと言えば」
「えーと…台詞の順序、逆にした方が良いんじゃ」
「うんまあそうだ…」
「うん」


昼下がりのことだった。あたしは思い至ったのだ。
あたしをここのところ襲うものは、あたしの内側から現れている、ということに。
それは叫んでいる。うっとうしいほどに。自分で止められるものなら、そうするだろう。
振り回されている。あたしでありながら、あたしのコントロール下に無いものに。
馬鹿馬鹿しいと思った。
目を上げると空が見えた。鉛色に、反射により光っている。



「いー天気だ」
「え、嫌味?」
「何で」
「あからさまに曇りだから」
「嫌味じゃないよ」
「ふうん」
「あたし、曇り好き」
「わ、暗っ」
「何を!?涼しいのに」
「まーそうだけどね…」
「そうだよ」
「どうだか」
「えー?」



くすくすと笑う声が壁に反射して、鉛の空に反射して、陰鬱な響きだった。
彼は楽しそうにそれを聞き、優しい顔でゆったりと微笑んでいた。
あたしは壁を一つ蹴りつけて、痛めたのは、自分の足だけだ。
馬鹿馬鹿しいと思った。
きっと彼も、そう思っているのだろう。
彼の内側など理解できるはずも無いが、きっとそうだ、あたしはそう思う。



「蹴るな」
「すいませ」
「がっこーを大切にね」
「はい…」
「阿呆ー」
「アホちがう!」
「何喋りだよ」
「何だろうね」
「あ、っそ」
「冷たっ」
「ちょうどいいね、夏だから」
「そーゆーもの?」
「そーゆーもの」



くすくすと笑う声が壁に反射して、鉛の空に反射して、陰鬱な響きだった。
あたしは愛しくなって、全てが愛しくなって、そうして、蹴りつけた壁を撫でた。
彼は笑う。首をかしげ、馬鹿なことしてる、と呟いた。
どうせ、馬鹿だと思った。全てが愛しくてならない。
しかし、常に不機嫌な賢者より、幸せな愚者の方が、本人にとっては幸せだ。
幸せな愚者になりたいのだ。



「幸せになりたいな」
「結婚したいの?
「んー…ちょっと違う。それもあるけど」
「ふうん?」
「結婚は早いよね」
「さあ…」
「え」
「さあ…」
「何何何っ?」
「別に、なんでもないけど?」
「あーそう…ふうん」



あたしは不満げな顔を隠して斜め下の腐った木の葉を見詰めていた。
馬鹿馬鹿しいと思った。
何だこの空しさは。一体何を期待していたのか。プロポーズ?そんな馬鹿な。
いくらなんでもあたしだってそんな馬鹿なわけない。
まだ子供だ。あたしは、まだ子供だ。色々考えてるけど、子供だ。
子供だから、色々考えるのだ。何故?暇だから?違う。知らないから?それも違う。
そうだ。まだ、知ろうとしているからだ。諦めたら、大人になるのだろう。
あたしは、余りに子供だ。
自分の感情もコントロールできない、自分が何を考えているのか分からない。
ただ望むのは、現実に殺されないこと。もっと望んでいいのなら、現実が自分の思い通りであれば。
そんなこと、あるはずないが。




「幸せ…」
「何リーマス急に。キモ…じゃなかった怖いんだけど」
「って何?」
「さあ」
「どうなったら、幸せになったと言えるんだろう」
「さあ」
「マジメに聞いてる?」
「聞いてるんだけどさ、それって、あたしもわかんないよ」
「だよね」
「うん…」
「何だろう」
「さあ…」



内側から現れるもの。よくよく考えれば全てが、そうだ。
景色を見ていても、その景色を感じるのは脳だ。内側だ。
全ては内側から現れる。感情が、その最たるものだ。
あたしはまだ子供で、そのコントロール法を知らない。
全てが愛しくてならない。それを言葉にすればどうなるのか。
ひどくひどく、脆く思える。得てして言葉は鉄を砂にする。
あたしは余りに子供で、その表現方法を知らない。
名前を呼ぶだけで、声を聞くだけで、顔を見るだけで、幸せになれる感情を、無限なあたしの感情を、
有限なあたしの言葉で表現など、出来ない。



「リーマス」
「何?」
「や、なんでもない」
「何このひと」
「なっ何でもない」
「馬鹿なことしてるね」
「馬鹿だよ」
「あ、っそ」
「幸せな愚者になりたい」
「何それカッコつけないでよ」
「なんだそのツッコミ!もう最悪!」
「僕も」
「え?」
「僕もなりたいな」
「じゃあ一緒になろう」
「何っプロポーズ!?」
「違う!」
「だよねー」
「そうだよ…」
「男からするものだよプロポーズは」
「えっ、うん!で、何何何?」
「別に」
「あー…はい…」




表現など、必要なのか?
内側から溢れるものだけで、僕らはいっぱいいっぱいだと言うのに。













040717(ええもういっぱいいっぱいです助けてくださ)