ひなた
walk slowly on the grass
look around in a beautiful air

微笑む事が何時からそんなに難しくなってしまった?









暖かい陽気が少しだけ顔を出している1月の中旬。
明日からはまた寒くなるだろうと分かっているから、少し外を歩いた。
息を吐いても白くならない事にいささかの感動を覚えて、無表情だった。



ゆっくりと這う様なスピードで歩いていると、景色はゆっくりとしか動かない。
いつもあたしが景色に置いてかれる気がするのはあたしが早歩きだからなんだろう。


それでもいつもは早歩きをやめるわけにはいかなくて、今日はそれでも、ゆっくりと。
歩くことにした。





「あ」



声が聞こえたので顔を上げるとルーピンが立っていた。



さん、こんにちわ」
「こんにちわ」
「散歩?」
「そうだよ」
「暖かいもんね」
「明日からはもう、寒いから」
「まだ冬だからね」
「うん」



他愛も無い話。その程度の関係だったし、不満も無い。
ルーピンはずっとにこにこと微笑んでいた。いつものことだ。本当に、嫌になる位いつものことだ。


「それじゃあね」
「ああ、うん」


最後まで微笑を崩さないまま、ルーピンは言った。
あたしも頷いて歩き始める。実はさっきより少しだけ早足で歩いた。
ルーピンが見えなくなる所まで歩いてから、またのろのろと歩調を緩めた。







◆◆







「あ」


あたしが間の抜けた声を発すると、ルーピンが顔を上げた。
あたしの顔を見とめて、微笑を浮かべる。


綺麗だと、そう思った。早歩きなんかしてるあたしには眩しすぎる。


さん、1周して来たんだね」
「うん、そうみたい」
「みたい?」
「適当に歩いてたよ・・」
「あはは」



彼の微笑には全く持って、作り物のようなところが見当たらない。
勝手な解釈なのだがそれでも、作り物のような気配を表に出さないというだけであたしは彼を尊敬できた。
だからどうという事も無いが、あたしが彼を嫌っていないという事は分かってくれてると良いなと思う。


「ルーピン君はさ」
「うん?」
「ずっとここに居たの?」
「ああ・・・」


此処はあたしがさっきルーピンに会ったのと全く同じ位置だった。
もう居ないと思って来たのだが、ルーピンは寸分変わらない位置に立っているように見えた。
まさかそんなはずは無いと思うが、とにかく、もう帰っていると思っていたのに。


「日当たりが良いから」


「・・・」



少しだけ、絶句した。イメージの通りに相当にのんびりした人なのだろう。
もう20分近く経っているような気がするのに。



馬鹿馬鹿しい事なのだろうと、少しだけそんな考えが頭を掠めた。
こんな何も無いところに立っているなんて、馬鹿馬鹿しいことなんじゃないかと。



馬鹿馬鹿しい事を躊躇なくすることの出来る彼が羨ましい、と。



あたしだって、ゆっくりと景色を見ながら毎日生きていたいのに。
もっと、彼みたくゆったりと微笑えんでいたいのに。
今日しか無いと思って意識してゆっくり歩くような、その程度の人間だ。



「何時も幸せそうだね」


あたしは気が付いたらそう口走っていた。ルーピンが目を伏せて呟く。


「そう見える?」
「・・・うん、見えるよ」
「ありがとう」


ありがとう?
それならそんなかなしそうなめをするのはどうしてですか


尋ねられるほど積極的でも、親しくも無くて。
でもあたしが彼に良い感情、それは恐らく憧れに近い、そんなものを持ってることを知っていて欲しい。



「幸せそうに見えるのが」
「え?」
「羨ましいな」
「・・・」
「ええと、幸せだから、じゃなくてさ。幸せそうに見えて」
「どういう違い?」
「あたしもそんな風に、幸せそうに見えるようになりたい」
「ふうん」
「うーん、強いって、そう言うことだと思うわけよ」
「あはは」
「ま、真面目に話してるのに」
「あはは、ごめんごめん」
「確かに、ちょっとクサかった」


あたしが彼に憧れに近い感情を抱いている事を、少しだけでも知っていて欲しい気がした。
いつまでも、日なたに立ち止まって微笑んでいて欲しいから。
ルーピンは少し微笑んで、ありがとうと嬉しそうに言った。



あなたみたいに笑っていられる強さが欲しいんだ。
だから変わらないでいてくれると良い。あたしもいつか、追いつきたいんだ。




















040124(あいたたたー話が変わってるよ・・書いたのあたしかよ・・)