机に向かって、レポートを書いている。図書室。賑やかな時間帯。
そんな
変わり者の午後。









「ねえ、それさ」
「煩い。集中できん」
「・・・」
「・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「(ほんとに無視だ)」
「・・・・・・・・」
「ちょっと質問が・・」
「手短にすませろ」





目に掛かりそうなほど長い前髪が、邪魔そうに見える。彼はそんなこと気にしては居ないが。
何も気にしていない。あたしのことも、前髪のことも、レポートの提出期限も。




「あのさぁ」
「さっさと言え」



あたしは少し眉をひそめた。あまりにも傍若無人な態度。それはまた彼らしいのだが、
こんな調子では、気の良いグリフィンドールの人たちにからかわれるのだって仕方が無いように思えてくる。




顔も上げずにレポートを書くのは、提出期限ギリギリに焦っているそこら辺の生徒の熱意とはまた別だ。
しかしまあ、こうやって見ていると事情を知らなければ同じに思えてくる。実際、そう思われているかもしれない。



「何だ?」



彼はそんなこと、気にしては居ないが。





「そのレポート、いつまで?」
「さあな・・確か、来月だ」
「(やっぱ知っててやってんのか)」
「何だ」
「それだけ」
「そうか」


下らない質問で邪魔をしたと責めはしない。話しかけると、あれだけ邪魔そうに扱うくせに。
よく分からないが、それもまたセブルスらしいと言えばそうなのかもしれない。どうなんだろう。




「ねえ」
「何だ」



今度は普通に答えたが、やはり顔は上げない。まあさっきよりはだいぶ進歩したと思う。



「やるの?それ」
「見て分からないのかお前は」
「だって来月だよ来月・・」
「ああ、そうだ」
「何で今やるのさ・・」
「・・・」



怪訝そうな顔でセブルスはちらりとあたしを見た(これはまた、ひどく進歩したものだ)
すぐに視線を手元に戻して言う。

「何故やらないんだ」
「ん?」
「今やろうと、いつやろうと、同じことだ」
「そうかな」
「ああ」
「でもさぁ」
「文句でもあるのか」
「・・ないよ」



あたしは諦めて自分の真っ白なレポートに視線を移した。全く持ってやる気がしない。
何と言っても、1か月後だ。そんなのあたしにとっては果てしなく未来の話だ。

きっとこれが一般の考え方なんだろう。セブルスはやはり、特別だ。



「変だとも言えるね」
「何がだ」
「こっちの話だよ」




あたしはくすくすと笑いながら答えた。セブルスは少し顔をしかめた、それはほんの少し。
きっと他の人だったら見落としているだろう。だとしたらセブルスは、どう見えているんだろう。
無口で無愛想でよく分からない人だ。でも意外と人気が有るような気がする。やっぱり特別だ。


「それとも変なのか・・?」
「変なのはお前だ」
「聞いてたの」
「聞こえる」
「ふうん」
「そして煩い」
「・・・」
「・・・」
「(ぜったいこれも無視だな)」
「・・・・・」
「(やっぱりなー)」
「・・・・・・・・」




あたしもたまにそうだ。セブルスが何を考えているのかなんて分からない。そんなの、当たり前だけど。
でも本当に分からなくなる。友人で居ても良いのかという、そういう根本的なところが。
それから、彼は本当に友人として良い人なのかどうかと言うことが。それは恐らく、恐ろしく微妙だ。



何か話しかけてもうっとうしそうにされると、腹が立つのが普通だから。





「(何であたしセブルスと友達なんだろう)」
「・・・」
「(むしろこれって友達と言えるの?)」
「・・・・・」
「・・終わった?」
「まだだ」




短い返答。あたしは眉をひそめる。これは、きっと普通だったら腹が立つだろう。



「もうすぐだ。お前はもう行けば良い」
「やっぱ邪魔?ごめん」
「いや」
「(おお意外だ)」



セブルスはあたしに視線を向ける。手は止まらないが。



「やりたくなければ、今やる必要など無い」
「うーん・・」
「いつやっても同じ事だ」
「うん?」
「逆の意味にも取れる」
「・・・」
「意味が分かるか?」
「イマイチ・・」
「後でやっても、同じだと言う事だ」



あたしは自分の真っ白なレポートに目を向ける。全く持って、やる気などしない。




「でもセブルスがやるって言うから」
「合わせる必要は無い」
「・・・」
「何だ」
「いや別に・・(それはそれで寂しいなぁ)」
「しかしだ。合わせても構わない」
「は?」
「好きにしろ」



それだけ言うと、彼はまた自分のレポートに向かった。カリカリという音だけがする。




「セブルスらしいね」




あたしは少し笑う。あたしが笑っても、彼には届かないし、響かないかもしれないけれど。
でもそれはまた、彼らしいのだ。やはりどこか特別な、いわゆるあたしにとって魅力ってやつだろう。


それからまあ、あたしはやっぱり彼の友人で居て良いんじゃないだろうか。
あたしの錯覚じゃなければ、セブルスも少し笑ったように思えたからだ。







「ありがたい話だ」








レポートから顔を上げなくても、彼がそう言う返答を返すのは、あたしだけだとも思いたい。
そしてあたしは真っ白なレポートの一番最初の文字を書き始める。

















031206(セブがこんなやつだったはず無いか)(偽ですいません)