a horse and a deer


馬鹿みたいだ。それでも、構わないが。』














今日もあたしは退屈で、セブルスはお花の世話に夢中だ。キモイ。
セブルスは花の妖精さんにでも恋してるんじゃ無い、と云って殴られた事が有る。
正確には彼は絶対にいや多分女子を殴ったりしないので、振りだけだが。
あたしは彼のそんな、思いやりが有るのか無いのか分からない奇妙なところが大好きだ。


「暇だー」
「………」
「花なんて放っといても咲くよ!」
「根拠は」
「いえ…すいません…あ、しゃがんでて足疲れてこない?」
「別に」
「折るよ」
「折るな」
「奇麗ですね」
「まあな」


最後の台詞を言うときだけセブルスは少し笑った。ちょっとキモイ。
あたしはそう口に出そうとしたが、セブルスがあんまり楽しそうなので云えなかった。
彼は花の手入れを念入りに念入りにやっていて、あたしのことなんて殆ど全く見て居ない。
それは別にいつものことだからもう傷つかない、と云うと嘘になる。いつもだが傷つく。
が、まあそれはおいておこう。取り敢えず心の隅の方でこっちを向くように念じる。多分無理だ。


「あの…」
「何だ」
「あたし帰りますよ」
「そうか」
「…(あっさりだなあ…)」
「?」
「…やっぱまだ良いです」
「そうか」


さっきからセブルスの視線を奪いっぱなしなのはほんのほんの小さな薬臭い黄色の冴えない花で、(言い過ぎか)(私怨が
あたしは段々本気でそれを折りたくなってきた。もしそうしたら、本当に殴られるかもしれない。
それでも今の状況よりは少しはマシと言えるんじゃ、ない、だろうか。いや微妙だ。
でもあんな花あたしの十分の一位の体積しか無いのに。それは余り、というか全く関係無いけれど。
あたしは色々考えながら苛々した表情で花を見つめた。この際、呪い枯らせたら良いと思う。


「セブルス、」
「ん?」
「呪いで花を枯らすって可能かしら」
「殴るぞ」
「まだそれを枯らすとは云って無いよ!」
「じゃあ何をだ」
「…ほら、毒花とかね…」
「そうか」
「可能かしら」
「教えん」
「う、疑ってますか」
「別に」
「…」
「帰らないのか」
「もう少し参考に見てます」


あたしは適当に答えたが、呪い枯らしたくて凝視しているだけなので手順なんて殆ど頭に入らない。
どうしようもない、とため息を吐いた。本当にどうしようもない。

あたしはただセブルスを見ているだけで、個人的な満足以外には何も得る物なんて無い。
このままセブルスは毎日どんどん賢くなっていて、あたしはどんどん愚かに為るのだろうか。
それでは、まったく、どうしようもない。


「…」
「どうした」
「へ」
「何を沈み込んでいる」
「え、いや、そんなことは」
「あるだろう」
「あーえっと…テストの事を考えると気が重いよ」
「毎日世話の手順を見ているから、大丈夫だろう」
「あ、慰めてんだね…慣れないだろうに有難う」
「それは、馬鹿にしているのか?」
「いやまあ本当の事だと思う」
「まあ、そうだな」


セブルスの横顔は何時もとても奇麗で、あたしはそれを見ていると目が痛くなる。

あたしはきみみたいになりたいのだろうか、それとも、なりたくないんだろうか。
あたしはきみみたいになれるのだろうか、なれるはずはないとおもう。


「あたし、頭悪いな…」
「そうか?普通だろう」
「セブルスよりは悪いよね」
「それは仕方ないな」
「分かっちゃ居るけど口に出されるとうざいなあ」
「は?何だと?」
「ななな何でも無いですすいませんでした」
「…そうか」




セブルスは何も考えて居ないような顔で頷いた。あたしはそれを眺めていた。
あたしはいつも少し離れたところから、そんな風に眺めている。

世界は進んでいるのだからあたしは後退するわけには行かない。
それは分かっているけどあたしには如何すればいいのかが分からない。
あたしはセブルスみたいに強く為りたいのに。賢く為りたいのに、いつも見ているだけで。
いつまでもこんな馬鹿なままで、何も分からないで、いつかセブルスにも見放されて、
いつか一人で死んで往くのだろうか。お似合いな結末だ。一番ありそう。


「…?」
「え?」
「どうした」
「あ、うん、何でも無いよ」
「今日は少しおかしいな。調子でも悪いのか」
「…」
?」
「くそー…」
「どうした」
「何でも無いよ。泣きそうだよ」


セブルスは驚いた顔で手に付いた土を払った。少し体を屈めてあたしを覗き込む。
あたしは端整な顔に近くで見られると言う事実が既に照れくさくて顔を逸らした。
そういう下らない感情ばかり持っているのだ。ああ下らない。


「あたしセブルスみたいに頭も良く無いし、薬草の世話も出来ないし、ってか何にも出来ない下らない人間だからさ、それなのにセブルスに付きまとってそして嫌がられないで心配とかされたりするともう何だか情けなくて訳分かんなくて涙が出る」
「…そうか」
「つかあたしの云ってる事が訳分かんないね。ごめんやっぱ調子悪いのかも」
「私には分かるが」
「は?嘘だー…いや慰めてくれてんだね、慣れないのに。泣ける…!」
「嘘では無い」
「…泣きそう」
「お前が」
「はあ」


あたしはほんとうにきみみたいになりたくてうっとうしくてばかみたいで


セブルスはいつも何も考えていないような顔で絶対にあたしを拒絶しない。
他に友達が居ないわけでは無いけれどあたしはそれが好きだった。甘えているのかもしれない。
セブルスだってスリザリンでは大人気だ。彼はそんなこと何も考えて居ないけれど。
あたしのことだって好きでも嫌いでもなくて、ただの空気みたいなものなんだろう。
それでも傍に居られればいいと思うのは友情とか恋とか憧れとかそういうのを足したよく分からないものだ。
それでも傍に居られれば良いと思う。


「お前が、そう思うのは、理解の範疇だな」
「はんちゅー?いや意味は分かるけどでも実際に使う子供が居るとは」
「話の腰を折るな」
「はいすいません」
「…とにかくだ…」
「…」
「ああもう、面倒だ…」
「何!?セブルスからそんな言葉が出るなんて予想の範疇外!」
「…」
「あーそんなあからさまにうざがらないで」
「…私は…お前が下らないなどとは思わない」
「あはは、慰めてくれてんだね」
「本当にだ。お前はお前だ。良い所が有る」
「…何か、セブルスがそう言うとそんな気がしてくるよ。逆に泣きそう」
「そうか」
「とか云ってるから馬鹿なのかなあたし。うざいよね」
「そうだな。しかし見る目は有る」
「うわあ…」
「冗談だ」
「いやそんな真顔で?え、冗談なの?あ、そうなんだ?」
「馬鹿みたいだぞ」
「でもセブルスは下らないとは思わないんだよね」
「そうだ」
「それならあたし馬鹿でも良いや」
「はは、馬鹿だな」
「…くっはーうざ!でも笑ったね!」
「それがどうした」
「あなた笑うと可愛いよ!」
「殴るぞ」
「あはは」


今日もセブルスは優しくて、あたしはそんな彼に夢中だ。
あたしが楽しそうに笑っていると、セブルスはふと気付いたように振り向いた。


「それからお前は勘違いしているな」
「何?」
「私はお前の事が好きだ」
「……は!?え!?は!?」
「は?」
「えー…あ、ああそういう意味ですかーあはは」
「どういう意味だ?」
「いやもういい。もういい。喋らないで泣いちゃうから」
「収まったと思ったら急に何だ…」
「切ないな乙女心…」
「?」
「うん、あたしも大好きだよ」
「そうか」
「うっわ切ねー」
「何がだ」


何でも無いよ、とあたしは笑った。セブルスは顔を顰める。いとしくてたまらない。
馬鹿みたいだ。それでも、構わないが。


















050331(何これそして誰。ちょっと面白いなーあまりに意味不明で)