雨カーテン
curtain of rain witch wash me!
このままサカナになって溺れ死んでも良いと思っていた。
なのであたしは阿呆みたいに口を開けて草の上に大の字になって
喉の奥に直接雨粒がなだれ込んで来るのを感じていた。気持ち悪い。
目に特に大きい水の粒が当たって跳ねた。ひどく痛い。
余りの痛さに、それとも目に加えられた慣れない刺激に、
思わず涙が出てしまって起き上がった。痛いなあ。
「あいたたた・・・」
一人で転んだ時に廻りに誰もいないとリアクションに困るのと同じ理屈で、
あたしは目の痛みを一人で表現することに苦労していた。
こういう類の独り言は空しいものだ。ばたたたた、と頭に水が落ちてきた。
「・・・もう、何なの、これ・・・うああ」
髪の毛からぼたぼたと水が垂れてきて、既にびしょ濡れで飽和状態なローブに
染み込むことができずに表面で雨に流され落ちていった。
あたしはしばらくその行方を目で追ったが、それが余りにも空しいことと、
実のところもう水だらけで分からなくなっているということに気付いて止めた。
空を見上げる。灰色だった。灰色のどんよりした雲が空一面を覆って、
そこから冷たくて当たると痛い雨がぼたぼたと絞られるように落ちてきていた。
「泣いてる、みたいだなぁ」
何となく口に出して、はは、と笑った。何を笑ったのか謎だった。
笑う時に少し体を反らせたその勢いのままに草の上にまた倒れた。
背骨に小枝か小石かが当たったのだろう。ごつ、と音がした。
「いってぇ・・・」
背中に落ち着かない感覚を感じつつ起き上がる気力も無くあたしは横を向いた。
草の間に水が溜まっていた。飽和状態さ、と呟いた。
「ぎゃーちょっとそこの人死ぬ気!?」
馬鹿みたいな声に反対側へごろりと半回転してみると、予想通りに
馬鹿みたいなジェームズが立っていた。でも主席だ。
「いんや・・・まだ生きたりぬよ」
「ああそう。でもこれじゃ死ぬな。すぐ死ぬな。」
「ごめんさっきの嘘・・・溺れ死のうかと思って・・・」
「・・・え」
ジェームズはひどく眉をよせてあたしの顔を覗き込んだ。
熱があるんだろうなぁとかなり大きな声で呟いた。
「そうかもねぇ」
「ああ、そうだよ。帰ろ」
「うーん・・・分かったすぐ行く」
「今すぐ行くぞ。ほら行くぞ」
「うう・・・」
行きたいという気持ちと行きたくないという気持ちが
あたしの中でせめぎあって飽和状態だった。それでも立ち上がる。
吹っ切るときには向かい合うのが一番だと誰か言っていた気がする。
もしかしたら故郷のテレビのカウンセラーだったかもしれない。
「ジェームズもついに彼女持ち」
「はあ?」
「あたしは寂しいよ」
本当は寂しいなんてもんじゃない。とても寂しい。すごく寂しい。
どれも相応しくないように思えて、でもあたしはそれ以上考え付かなくて、
大丈夫なのかあたし。頑張れ自分。
「彼女?」
「さっきのさぁ・・・美人さんなさぁ・・・エヴィント?」
「それ誰?というか彼女じゃないし」
「は!振ったのあの美人を!?バッカー!」
「主席だよ僕もエヴァンスも」
「・・ごめんなさい。あー否定できないのが嫌だ」
「ハイ許す!帰ろう!」
あたしはなはは、と力なく笑ってぐしゃぐしゃと音を立てながら立ち上がった。
どうやら思い違いだったみたいだ。でも何でこんなに嬉しいのか、分からない。
「ねえ彼女じゃないの?それでも健全男子?」
「シリウスじゃあるまいし・・」
「・・微妙なところで」
「うん。微妙なところだ」
「美人なのになぁ」
「ははーん僕に相応しいと」
「・・(何であたしは自分の首を絞めるような事ばっか言うんだろうか)」
「どうかしたかい?」
「いんや・・」
「でもさ、」
「ん?」
「微妙だな。微妙だ」
何が微妙なのかも、分からない。
ただジェームズは立ち上がったあたしに手を差し伸べて言う。
「でもまあとりあえず先に君を迎えに来たんだ」
030706(姫!ジェームズってナイトっぽいと思うのは私だけでしょうか)(だろうね)
031115(書き直しました。進歩はないけど話はめっちゃ変わりました(ダメじゃん))